どうしても君と来たくて。
ものぐさな君を、懸命に連れ出した。
どうしたって観たいとか、本当は多分そんなことじゃなかったんだ。
「こんなとこあったんだな」
感心したようにもらしたシカマルに、
散歩してて見つけたんだと適当な返事をする。
ちらりと時間を確認してその場に腰を下ろすと、
シカマルもすぐに隣りに座り込んだ。
下の方には人がごった返しているけれど、
ここまで上がってくる人間はそういない。
必死に見つけた、超穴場。
「…そろそろだ」
同時に空を仰ぐ。
と、タイミングよく一発目が空に咲いた。
「…すっげえ!」
「な!」
俺たちの町では毎年、こんな時期になってから花火大会を催すのが通例だった。
もう暦の上ではとっくに秋で、長い休みも終わるという頃、ケジメをつけるかのように花火を打ち上げる。
俺も毎年、どんな形にしろその花火を見てはいるけれど、今年の花火は特別なものに感じられていた。
何故かなんて判りきっている。シカマルがいるから以外に、理由なんてない。
去年は密かにこいつのことを考えながら、こいつ自身を含めたダチ(全員野郎だ)数人と一緒に見上げていた。
だけど今年は違う。俺とシカマル。二人。
なんでかってそりゃ、ちょっと前に晴れてそういうお付き合いをするようになったからなんだけど。
はじめから決めてた。今年はあの花火を、シカマルと二人でって。
シカマルは元々自他共に認めるめんどくさがりで、今回だって家から引っ張り出すのに少々の苦労を要した。
でもいつもならこんなにまでじゃ、ないんだ。付き合いの悪いっていう奴じゃないし、花火だってどうも結構好きらしい。
多分俺が思うに、俺と二人きりだってことを解ってて、だからノリが悪かったんだろう。
意識してる、っていうのは。俺にとって、俺らにとって、いいことなんだろうか?今はまだ解らない。
結局渋々といった感じで、だけどちゃんと出てきてくれたシカマルを連れて、俺はこうして花火を眺めている。
想い出と同じ極彩色。
咲いては散り、散っては咲いて。
夏と同じ。なんて鮮やかに、儚いんだろう。
ふと隣りを見ると、すぐ近くによく見知ったきれいな顔。
惚けたように、見入る。
「……んだよ」
「花火よりキレー」
「……」
「シカちゃんが。」
黙るから、伝わっていないのかと思って全部を言った。
するとシカマルは、何とも言えない眼で俺を見て、それをゆっくり逸らしながら呟いた。
「ねェわー……。お前、そりゃ流石にマジ、ねェよ……」
しみじみ言うな。
「何それ、ドン引き?酷くね?」
「いやー…だって、」
「……」
「………」
不意に二人ともが黙り込んで、沈黙が訪れた。
ずっと思ってたこと。
無性に怖かったけど、言葉にしてみた。
「…来年はさ、着てこられるといいよな、浴衣」
「そーだな」
「……」
「……」
また、少しの沈黙。怖い。怖い。何か言わないと、と思って口を開いたら、先にシカマルの声がした。
「慣れねー下駄で足痛ェとか言っても、置いて帰っから。」
―――ああ。
「……安心しろ。逆にお前が言ったら、俺はお前を、お持ち帰る!」
「……サイアク!!!」
シカマルはそう言って、でもその顔はいつもみたいに笑っていた。
その後は何だかもう笑えて、意味もないのに二人して涙が出る程笑い続けた。
ありがと。
来年も一緒にいたいって言ってくれて。
いるって言ってくれて。
当たり前に、一緒の未来を話してくれて。
救われた気がしたんだ。
その後調子に乗って、放り出されていたシカマルの片手をぎゅっと握ってみた。
ちゃんと握り返してはもらえなかったけど、振り解かれたりもしなかった。
そんなことが今は、何より嬉しい肯定の証拠。
まだまだガキな俺たちの、精一杯の行為。
一年後の今日までには、流石にちょっと進んでたいなんて思ったり。
ちらりと見たシカマルのその頬は、花火に照らされて幻想的ですらある。
お前はあんな風に言うけど、俺がさっき言ったことはやっぱり本当だよ。
見られていることにふと気付いて、俺の恋人はとてもきれいに微笑った。
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ギリギリどころか間に合ってないよ…
そんな訳で花火ネタでした。
いつになったら私のサイトはまともに書き上げたぜ!ってSSを上げるんでしょうか。
カラオケ入済みと入予定曲 全部じゃないよ
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